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今回も、この書籍から「なるほど」と感じたところを、自分の頭の整理も兼ねて書き出してみました。

経営学の本故に、診断士の勉強時に学んだ少し懐かしい知識と共に。

市場環境にアプローチする3つ戦略

ポーターが掲げたSCP戦略(Structure-conduct-performance)は、ポジショニング戦略とも言われ、産業構造が比較的安定した、市場に向いているとされます。米国のコーラやシリアルの市場が例になります。

戦略のポイントは、競争環境の参入障壁・移動障壁を高め、ライバルとの競争を避けることにあります。

リソース・ベースド・ビュー戦略(Resource based view)は、人や技術の経営資源に着目し、他社に真似できない独自の資源を磨くことで、安定的な業績を実現するものです。日本の自動車産業やかつての家電市場が当てはまります。

戦略のポイントは、価値があり模倣されにくい経営資源を形成・活用することにあります。

リアル・オプション戦略は、技術の進歩が早いや、新しい市場で顧客のニーズが変化しやすい等の、不確実性が高い競争環境に適した戦い方です。多くのIT企業が属するのが、この分野にあたります。

戦略のポイントは、常に不確実な競争環境に、素早く柔軟に対応することにあります。

リアル・オプション戦略の有用性

昨今のビジネス環境の変化で、これまでRBV戦略が重視された自動車や家電の市場が、コスト重視とハイエンド化で二極化しています。なるほど、その通りだなと思う点です。

二極化のなかで、コスト重視型では、生産規模がコストダウンに重要になることから、販売量を確保するために、SCP戦略でポジショニングや参入障壁づくりを進めます。

一方、ハイエンドには、新しい技術やニーズへの対応がKeyになるため、リアル・オプション戦略で不確実性と向き合っていながら、他社に先んじて新しいことへ挑戦していく必要があります。

大手自動車メーカーが海外のIT企業と連携して、新技術や新サービスの開発に取り組む姿は、まさにリアル・オプション戦略ですね。

少し前であれば、PBV戦略の観点から、自動車メーカーも自社のリソースでコネクテッドな車の開発を進めていたのではないでしょうか。

ハイブリッド起業とは

もう一つ面白かった論点が、ハイブリッド起業です。

ハイブリッド起業とは「会社に努めながら、それと並行して起業する」ことです。

日本語では、兼業で自らの事業を行うこと、になるでしょう。単なる兼業とは異なると思います。

ハイブリッド起業はリアル・オプション戦略とも考えられます。

「いまいる会社に努め続けながら、副業として小規模で事業を続け、『新規事業がものになるかどうか』の不確実性を下げる」ことが出来る点が、ハイブリッド起業の最大のメリットになります。

リアル・オプション戦略の前提として、「不確実性が高いほど、オプション価値が向上する」とあります。

そのため、起業時に既にある程度事業計画(売上の見通し)が立てられる状況や、ハイブリッド起業を続けビジネスが見通せる状況になると、オプションの価値が下がり、ハイブリットである必要がなくなります。

不確実性を低減できれば、段階的な意思決定は必要なくなりますよね。

リアル・オプション戦略とハイブリッド起業

リアル・オプションの重要なポイントは、不確実性が高く投資を躊躇してしまうような状況でも、柔軟性を高めることで、下ブレのリスクを低減しつつ、上ブレのチャンスを逃さないことにあります。

ここは、個人の事業でも参考になる面白いアプローチだと思います。

私の様な、ハイブリッド起業の個人事業主が戦っていくためには、解明された分野ではなく、不確実性の高い分野で、個人故に柔軟性を持って戦っていくしかありません。

最も、私のケースに限らず、小が大と戦っていく上でも大道となる戦い方であると思います。そのため、自分自身のハイブリッド起業でリアル・オプション戦略の実地検証やブラッシュアップをしつつ、診断士の提案としても取り込んで行きたいと考えてもいます。