少々バイリンガルニュースの受け売りではありますが、最近のニュースより、クライシス・マネジメントについて考えることがあり、文章に書き出してみました。
なお、「© Institute for Public Relations」のページを参考にしました。よくまとまっていて、面白いと思います。
目次
クライシス・マネジメントとは
日本ではまだあまり馴染みのない言葉だと思います。わかりやすい比較は、リスク・マネジメントでしょうか。
リスク~が予防のようなイメージであることに対し、クライシス~は起こりうる事件や事故に対していかに対処するかという考え方だと思います。
まずCrisisの定義ですが、は以下の脅威をうむものとしています。
(1) public safety,
(2) financial loss
(3) reputation loss.
ビジネス的には、視野が狭くなるとpublicとfinancialに目が行きがちですが、対応方法を謝るとreputation(名声)の影響があり、その結果financialが更に悪くなる負のサイクルが想像できますね。
クライシス・マネジメントの3段階
次に、クライシス・マネジメントのプロセスを下記の3つの段階に分けて、対策が書かれています。
Pre-Crisis Phase
Crisis Response
Post-Crisis Phase
リスク・マネジメントの比較から、クライシスの発生に対するマネジメントと考えていましたが、やはり事前準備も重要なようです。
Pre-Crisis Phase
ここがアメリカだなぁと思うところですが、今後必ず起こりうるCrisisに向けて、計画を立て対策チームを作り、準備をしようという考え方です。ステートメントのドラフトも作ろうと書かれています。
商品・サービスへの品質クレームをゼロにしようとするよりは、一定で発生するものとみなし、それに備えようとの考えです。
サービス業でも、製造業でも感じましたが、ここが日本と異なるアプローチだなと思っています。
ただ、失敗を減らすのは大切ですが、もしもの時に備えるのも重要ですね。
Crisis Response
このパートの、クライシスが起こった時に如何に対応するかが、事の本質的にもビジネス等の対外的にも、やはり重要ですね。
アプローチのポイントとして以下の3つの注意点が書かれています。
(1) be quick
(2) be accurate
(3) be consistent
クライシスの内容によるでしょうが、進行中で人命などの安全性に関わることでしたら、1や2の速さや正確さが重要になります。
一方、不祥事の様なことでしたら、2と3の、正確さや一貫性が重要になりそうです。
クライシス時に、「臭いものには蓋」的な対応をするのと、この三点に注意した対応するのとでは、発信する情報の伝わり方が異なってきそうです。
危機や不祥事を前に、「当事者により意見の内容が異なる」、「毎回コメントが違う」となってくると、聞き手としては何を信じて良いのかわからなくなります。
Post-Crisis Phase
このフェーズは、クライシスは去った後の、失った信頼や名声を取り戻すために必要とされることです。
このフェーズで取るアクションによって、信頼を取り戻すため、「どの位時間がかかるか」と「どこまで取り戻せるか」が変わってきそうです。
上記の1,2,3に適切に対応できると、結果として、「もしもの時や悪い時にも、適切に対応できる会社・組織・個人」として、信頼感を高められる可能性もあると思います。
Webサイトでは、事後のコミュニケーションとして、継続的な関係者や事象との対話も重要なアクションとして書かれています。
クライシス・マネジメントのポイントを考える
最近の事例
最近の某大学スポーツの問題から、クライシス・マネジメントができていないなと思いました。
でもこれは初めて感じたことではなく、日本では、同じようなクライシス問題がよくニュースを賑わせているように思います。
今回の件も、速さ、正確さ一貫性の切り口のどれも見ても、いずれも失敗があり、クライシスの状況を悪化させてしまっていますよね。
本質的な問題
この様なクライシス時に、先程のWebサイトに書かれていたような「クライシス・マネジメント」を知っているか、自社に取り入れているかで大きな違いは当然あるでしょう。
しかし、同時にあくまでこのマネジメントをツールと考えると、やはり本質的には、有効な対策の実施には「組織の実力」が問われるように思います。
もちろん、クライシスが起こり、様々な物事が同時進行で進み、少なからずパニックになることを想像すると、このサイトの書かれている事前準備やアプローチは非常に有効だと考えます。
有効な「打ち手」のために
ただ同時に、Quick, Accurate, Consistentに対応した「打ち手」を講じるには、問題の根源を突き止めるのが、まずは重要な一歩だと思います。
これが出来ないと、結局、場当たり的な対応に終始してしまうはずです。
問題点の特定が誤っているので、協議をいくら重ねても、「そもそも話がまとまらない」、あるいは「毎回異なる誤った回答」が出てくるでしょう。
これでは、Quick, Accurate, Consistentの何れでも失敗しています。
場当たり対応になってしまった理由は?
チームや組織を方向づける「ゴール」の設定が出来ていなかったのだと思います。
そもそも「大学スポーツが何を目指すのか」の信念が、会社で言う経営理念が、組織に浸透していなかったのでしょう。
プロスポーツであれば、ファンや観客が一番になるはずです。
同時に、営利団体なので利益をあげなければいけません。
そうすると、またやはり、いかにファンが重要かに話がもどります。
学生スポーツでは、私は「競技力や人間性の育成」に重きを置かれるべきではないかと思います。
ただ残念ながら、今回は、他の何かのために勝つことだけが優先され、当事者である選手が置き去りにされていたように感じます。
まとめ
クライス・マネジメントに限らず、事業活動においても、Quick, Accurate, Consistentな戦略を立てることは重要だと思います。
これは、危機に対してだけではなく、チャンスに対しても同じです。
ただ、そのためには、今起きているクライスや課題の原因を分析して、対策を正しく方向づけさせる必要があります。
そして、その時の何が正しいかの判断基準は、組織の目標や理念になるのだと思います。
普段は、「理念なんて」と感じることもあるでしょうか。
ただ、大きな問題が生じ組織全体が動揺している時にこそ、しっかりと方向付けができる「骨太な組織の目標(社会に与える価値)」が必要なのだと思います。
コメントを残す