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誰がアパレルを殺すのか

刺激的なタイトルではありますが、名前負けしない臨場感や真因分析のある内容で読み応えが十分でした。
本書はアパレル業界を掘り下げた内容ですが、深いところでは、アパレルに限らず「他の業界でも共通だよな」と考えるところがありました。

「つくる」はずが売れ筋を「追う」ように。

“業界は、生活必需品ではあるが嗜好品の要素も強く、一般的にはシーズンごとの流行があり、製造者として流行や需要への対応が不可欠。”

よく聞くことのあるフレーズで、この分析は正しい様に思います。
大前提として、外部環境(需要)の変化(流行)に対応できなければ、自社の存続(売上と利益の確保)が難しくなります。

しかしながら、問題点は、流行を追うあまり、自社の核心となる技術(デザインや品質)の育成や、ブランドや顧客とのネットワークを築くことが疎かになってくると、自社が提供できる価値が曖昧になってくると考えられます。

これが本来は魅力的な商品をつくることが重要であるはずなのに、いつの間にか売れ筋を追いかけてそこを他社と競ってしまっている状況です。

“仏を作って魂をいれず”と言えます。
仕入れや販売ルートは整備して在庫も確保したけれど、肝心の「顧客に提供する価値」が曖昧な状況です。
こうなると、他社ではなく自社が選ばれる理由が曖昧になり、価格以外に勝負できるところがなくなります。

当然のことではありますが、流行の取り込みや顧客の声を商品へ反映はさせつつも、やはり、自分が着たい商品を作る・売る、その良さをしっかりと伝えるといったことが重要になりますね。