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誰がアパレルを殺すのか②

前回に引き続きです。
今回の内容からは、ユニクロも実は単に安価に販売しているだけではいことに気づきました。
商品の価値を高め、マーケティング活動をしっかりと行い、適正価格で売り切って(狙った価格で狙った数量を売り切って)廃棄等のロスを最小化することで、結果として商品全体の値段を抑えているのではないかと考えました。

麻薬のような大量生産OEMによるコストダウンで同質化

“優れた生産ラインを持つ外部の企業を活用し、デザインや販売などにより多くの資源(資金)を投入する。”
これも、一側面として、多くの業界で正しい判断と言えそうです。
ただし、生産に関するノウハウがなくなる、需要に応じたフレキシブルな生産がむずかしくなる等の問題はすぐに頭に浮かびます。

アパレル業界でも多くの企業が、以前の国内自社生産から中国のOEM生産に切り替わりました。仕入価格が生産コストを大幅に下回るからです。


加えて、流行を追いかけるデザインも不人気をによる売れ残りを恐れ大きな特徴はなく(他社と同じで)、売り切れに対する機会損出の回避や仕入単価ダウンのために生産ロットの拡大等があり、結果として同じ様な商品が大量に市場に投入される様になりました。

その様な商品の状況(似たものを作りすぎ)に加え、シーズンを過ぎたらバーゲン・安売りをするという業界の慣習も相まって、年間を通じて何度も値下げ販売が行われ商品の価値や企業の体力を低下させることになりました。
積極的なバーゲンで自らの身を削っている状況です。

また、一見OEMで効率的に生産しても、結果的には売れ残りによる過剰在庫や死蔵在庫による非効率(つまりコストアップ)が発生しています。
そして、それら影響を内在する店頭商品の販売価格は、適正価格とは言いづらい(高い)状況になっています。


バーゲンや廃棄ロスによるムラやムダが多いため、結果としてそれらのコストアップが、通常販売品にも跳ね返ってきているためです。

ここも、拡大志向や、“やみくも”な他社の追随がもたらした結果であるように思います。

OEMによる見た目のコストダウンを追いかけるだけで、管理会計で言うところの「生産コスト」、「商品別利益」、「在庫管理」などの係数管理や、目標販売数量を達成するための「マーケティング活動」ができていなかったと考えられます。

市場全体が成長する“追い風が吹いている”時は良いですが、外部環境が変化し、「企業を筋肉質に持っていく」、「計画的にビジネスの内容を変えていく」時には、顧客に提供する価値の再定義や自社体力の見直し(会計的な方向付け)が不可欠になると改めて感じました。