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自社が顧客に対して提供する価値や、競合他社との差別化要因を考える時に、この「本質的」と「付随的」の考え方が便利で、実務においてよく使っています。

本質的サービスと付随的サービス

本質的サービス

本質的サービスは、言葉の通り、自社が顧客に対して提供する商品・サービスの中核となる価値です。
例えば、おいしい食事、おしゃれで着心地の良い洋服、丈夫で使いやすい○○等でしょうか。これらは、いわゆる飲食業、小売業、製造業等と、業種等によって区切ることができますね。

付随的サービス

付随的サービスは、こちらも言葉から想像ができますが、自社が提供する商品・サービスの“プラス アルファ”な価値になります。
アフターサービスや支払いのファイナンスサービスが、教科書にも出てくる、わかりやすい例と言えます。
自動車を購入する時に、「アフターサービス体制」や「支払い方法に選択肢が多くある」ことが、本質的な性能やデザイン以外で、購入の意思決定を左右する付随的なサービスにあたります。

広義で考えられる例としては、

  • 宴会が可能な大部屋を持つ飲食店が顧客に行う送迎サービス
  • アパレル業のスタッフが提供するコーディネート
  • 単なる物品の販売だけではなく、顧客の困りどころを捉えた営業活動や製品の提供を行う提案活動
  • 人道的活動や環境保護等の社会的責任を積極的にはたす企業の商品・サービスを購入することで、消費者の間接的な社会貢献を実現

これらは、まさに本業から派生する要素であり、○○業等の区切りが付けづらく、会社の定款に書くようなことではありませんね。
また、あくまで付随的なものですので、これだけで「めしを食べていく(収益をあげる)」ことは難しそうです。

顧客提供価値と差別化要因

現代の日本では、消費する側の人口が増えず、一方で供給者は新しい商品やサービスの開発を続けていますので、「モノあまり」の時代と言えると思います。
供給者としては、他社ではなく自社を選んでもらうために、顧客に提供する価値を高め他社との差別化を進め、自社の競争優位の確立が不可欠になります。

ただ一方で、今後さらに人口が減少すると、供給者が減少し、十分なサービスが受けられなくなる恐れもありますが。

顧客に提供する価値 = 商品・サービス / 価格

上記の様に考えると、価値を上げるためには、「分母の商品・サービスを増やす」か、「分子の価格を下げる」になります。
技術革新や業界の常識や慣習の打破等により、価格を下げることにも大きな意義があります。しかしながら、コストダウンには限界があるため、商品・サービス自体の向上も必要になります。

とは言うものの、商品・サービスについても、多くの同業他社との競争で、自社が飛び抜けるのは、そんなに簡単なことではなさそうです。

  • 仕入れて販売のビジネスモデルだと、売るもの自体に大きな差をつけるのはむずかしい。
  • 製造者であっても、あまりに個別対応すると製造コストが上がり、収益が確保できない。

などが考えられるからです。

こうなった時に、提供する商品・サービスは”ある程度”汎用的なものだが、付随するサービスによって、他社との差別化や顧客への個別対応を実現できそうです。

プロダクト3層モデルとの比較

本質的サービスと付随的サービスの考え方は、製品の価値を3層で考える、プロダクト3層モデルと近い考え方になります。

製品の中核:顧客が実際に購入している、中核的な価値です。「その製品が何に使われるか」でしょうか。

製品の実体:こちらは、製品の実態や特性になります。機能や品質、デザイン、ブランドも含まれます。

製品の付随機能:こちらが、配送、据え付け、アフターサービス、クレジット等の製品に付随するサービスになります。

実際には、製品の中核と実体は切り離せないものであり、製品の基本的・本質的な要素と、加算され自社の特性が出しやすい付随する要素で考えるのが、方針や施策を議論しやすいのではないかと考えています。

付随的なサービスは遊び心も忘れずに

考え方は、本質的・付随的サービスと、プロダクト3層モデルはほぼ同じと言えると思います。

しかしながら、実務の限られた時間や資源の中で取り組みを進めていくためには、本質と付随の分け方が明確ではないでしょうか。

そしてまた、当たり前といえる本質的なところは強化は不可欠で、むしろ競争の前提と言え、継続的に磨き上げて行く必要があります。

一方で、付随的な要素で会社や個人の特色、経験や強み、時には遊び心を活かせると、他にはない、面白い仕事ができるのではないかと考えています。