Pocket

形式知と暗黙知について語られる時に、これまでは暗黙知のメリットを多く感じていましたが、最近はデメリットも感じ始めています。

形式知、暗黙知とSECIモデルによるナレッジ・マネジメント

まずはこれらのナレッジ・マネジメントが何か?ですが、

形式知とは

・客観的に言語化できる知識(マイケル・ポランニー)
・言語化・視覚化・数式化・マニュアル化された知識(野中郁次郎)

これは、知識や経験の移転や模倣が可能な状況にあることですね。

暗黙知とは

・主観的で言語化することができない、言語化しても肝要なことが伝えられない(マイケル・ポランニー)
・社員や技術者が暗黙のうちに有する、長年の経験や勘に基づく知識(野中郁次郎)

こちらはまさに、「匠の技」や「集団の中で長い年月をかけて築かれたノウハウ」でしょうか。

SECIモデルとは

形式知と暗黙知のマネジメントに関する概念です。
詳細に渡ると長くなりそうで、web上に多くの情報がありますので、ここでは簡単な説明に留めようと思います。

SECIモデルとは、下記のプロセスになりますが、個人の暗黙知を組織の形式知化として、その形式知を再び暗黙知化することで模倣を困難にする過程であり、考え方です。

Socialization / 共同化 暗黙知⇒暗黙知 経験を通じた暗黙知の共有と創出
Externalization / 表出化 暗黙知⇒形式知 対話などによる暗黙知の概念化
Combination / 連結化 形式知⇒形式知 形式知を組合わせ情報活用と体系化
Internalization / 内面化 形式知⇒暗黙知 形式知と行動による新たな暗黙知の獲得

PDCAの様に、経験や知識などのナレッジを、改善プロセスを続けることで、個人だけでなく組織として高め続けることになります。

暗黙知が重要

上記の知識体系にこれまでの経験を加えた、私なりにナレッジ・マネジメントとして、以下のようなケースを考えてきました。

組織論では、個人のノウハウをチームの形式知として共有する、またチームの形式知を暗黙知化することで、他社に真似できない独自の強みを、オペレーション面や組織文化面で築く

IT活用の面では、システムを活用することで、暗黙知から形式知への共有を効率的に進める。埋もれてしまいそうな情報の効率的な供給が肝。

生産・技術面では、テレビ等のデジタル品は形式知化されたモジュラー(組み合わせ)型で生産規模やコストが勝因になるが、自動車等のインテグラル(摺り合わせ)型では技術力や長年の経験値(≒暗黙知)が重要になり、日本企業が諸外国とより勝負しやすい。
労働集約型の製造業を中心に、技術・生産スタッフが長年の経験に基づく暗黙知を多く持っており、それらを新人や次世代のスタッフに引き継いでいく、形式知化して会社のノウハウとすることが当社の課題である。

などなどが、形式知と暗黙知、SECIモデルが当てはまると考えています。

ただ基本的には、暗黙知こそが他社に模倣が難しいが当社の強みであり、顧客にとっての差別化となり、「暗黙知→形式知→暗黙知→形式知」の知識のTransferを進める中でも、いかに暗黙知の部分を強化するかがポイントと考えてきました。

事象の原因の掘り下げによる暗黙知の獲得、暗黙知をベースとした強みの獲得や他社との差別化や、暗黙知の共有による組織全体の○○力(技術、サービス、生産など)の向上等です。

社会の変化から暗黙知を考える

経営企画の仕事をして15年位、中小企業診断士は勉強を始めてから10年近く経ちますが、社会の変化の中で、私なりの暗黙知の見方が変わってきました。

SECIモデルがまさにうまく表現していますが、やはり暗黙知を形式知に変換していけないと、時に会社にとってマイナスの影響を与えることが考えられます。

海外と比べた時に、「日本企業は生産性が低い、意思決定に時間がかかる」といったところから、改めて「暗黙知→形式知」の重要性を感じます。「生産性が低いだろう」というのこれまでも認識されてきましたが、暗黙知を中心とした日本ならではの強みとして、何となく容認されてきたように思います。

しかしながら、継続的な労働人口の減少と人手不足の現状や、デジタル化による最近のテクノロジーやビジネスモデルの変化をみると、暗黙知が企業の成長にとりデメリットになりかねない状況になっています。