業界全体としては厳しいと言えるアパレル業で、成功事例を学びたいと思い手に取った一冊です。
書籍の中には、創業者の強い思いと行動が書かれています。はじめは、一般的な経営者や有名人の成功を綴った自叙伝的かなと思っていましたが、すぐに内容に惹きつけられ、一気に読み切ってしまいました。
様々な取組をしていますが、自社ブランドや会社のあり方へのこだわりが一貫していることが、まわりの人間を巻き込む熱量になっているのだろうと考えられます。
今回は、その中から、ビジネスに役立つエッセンスをまとめたいと思います。
モンベルの決断とは
書籍名の「7つの決断」にある通り、大きな決断をストーリーの軸にして、モンベルの沿革が書かれています。
筆者は決断を「将来を見据えて、あえて困難な道を選ぶ」と定義しています。
- 資金ゼロからの決断
- 小さな世界戦略
- パタゴニアとの決別
- 直営店出展と価格リストラ
- モンベルクラブ会員制度の発足
- アウトドア義援体
- 山岳雑誌「岳人」発行
「小さな世界戦略」は、まさに現代、様々な業種の企業が参考に出来る、失敗体験と成功体験が書かれています。
「パタゴニアとの決別」「直営店出展と価格リストラ」「モンベルクラブ会員制度の発足」では、自社製品やブランド、顧客への提供価値へのこだわりを軸とした経営判断の繰り返しで、ストレートに、大変勉強になります。
「モンベルクラブ会員制度の発足」「アウトドア義援体」「山岳雑誌 岳人 発行」は、ソーシャルマーケティングや企業のCSRと言ってしまうには少し違和感があるのですが、私が今後もう少し学びたい、企業の社会貢献について書かれています。
ブレない経営戦略
同社は高度経済成長が終わった後の1975年に設立され、バブル景気やアパレル業全体が右肩上がりだった時代的な追い風も受けて、今日に至っているでしょう。
しかしながら、その追い風が止んで久しい後も、同社は成長し続けています。その姿を見ると、会社の進むべき方向が明確で、長年の行動や特に失敗も含めた経験から学び続ける同社が、顧客に価値を提供し市場から必要とされ続けているのだと考えられる。
よく使われるフレームワークの4P(Product, Price, Place, Promotion)に当てはめても、それぞれの決断や行動に、明確な理由や目的が存在します。
- 下請け工場からの脱却 → 一時的な売上減少も、自社の販路開拓
- デュポン素材を活用した自社ブランド品 → 商品力・開発力のアップ
- パタゴニアとの代理店契約の解除 → 売上の1/4よりも自社ブランドの育成
- 直営店の出店や会員制度の発足 → 顧客との接点の強化
- 小売店の価格販売を止めるための、価格リストラ・定価の値下げ → 適切な市場価格の維持
- アウトレットショップ → 適切な市場価格の維持
まさに、顧客や自社のブランドを軸に、ブレることなく経営判断(決断)を続けています。
モンベルになるべくしてモンベル
ブレない決断の連続が同社を同社たるべくし、熱烈な顧客を獲得してるのでしょう。またさらに、社会貢献的な活動をすることで、ライトな顧客も獲得し、双方をうまく両立しているのではないかと考えられます。
モントベルの存在意義や目指す方向と、自社ブランドへの強いこだわり
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思いが一貫していて明確になっている
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社員も含めた一つ一つの行動がモンベルらしい
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それらの積み重ねによって、モンベルになるべくしてモンベルになった
登山用品というニッチといえる市場で(だからこそ)、自社の価値観にこだわることで、それに共感する顧客を集め、その期待に答え続けることで、市場環境が大きく変わる中でも、同社は成長(顧客に価値を提供)し続けて来たのだと思われます。
また、社会的な取組をすることで、結果として、従来よりも少し幅広い顧客層(モンベルをよく知らなかった、これからアウトドアを楽しみたいや機能的な洋服を買いたい等)からも共感を得ることが出来て、次の成長を実現していると考えることも出来そうです。
一般的には、コアな顧客層とライトな顧客層の両立は難しいと考えられますが、これらの自社に出来ること(特徴)で、世の困り毎の解決に取り組むことで、(狙っていたかは定かではありませんが)上手くターゲット層が広げられているのではと考えられます。
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