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最近我が家にもワークマンの広告が入るようになりました。商品もアウトドアやスポーツが充実してきたためか、カラフルで目を引きますよね。


そんななかで、ランナーとしてはランニングウェアが気になり、早朝に子供を体操の練習に送った後に店舗に行ってみました。
いつも前を通るのでずっと気にはなっていましたが、営業時間が朝8時から夜8時と気合が入っていて、なかなか時間があいませんでした。

ランニングタイツを買うために朝8時に店舗へ

オンラインショップで入念に下調べをし、Find Outというジョキング向けと思われるラインアップの中から、半パンの下にはくタイツと、雨の日用のジャケットを狙いました。


無骨な感じの店内には、開店すぐの8時台でもお客さんがいて、その道の専門家とそうでない人も、といった感じでした。

早速お目当ての展示エリアに向かうも、なかなか見つからなくて店内をぐるぐると。いろんな商品があって、一般人には「へーっ」という専門的な商品も多数でした。
やっとタイツを見つけるも残りは数点。これはなかなか見つからないはずだ。でもちょうど欲しいMサイズで柄も悪くないのがあったので購入しました。

まだ12月下旬だったので、店頭在庫が枯渇とは随分好調だなという驚き(失礼ながら小田原の普通の郊外店なので)と、オンラインショップ等で調べても追加入荷しない強気というか割り切りにまたびっくりしました。
人気アイテムはシーズンの前半でもなくなってしまうんですね。

さて、以上の経験から感じた疑問と考察です。

機会損失か在庫過多かのせめぎあい

ワークマンは、いわゆる在庫不足による販売機会の損失よりも、売れ残り在庫になることを問題視しているのでしょうね。
これは、ユニクロ等の自社工場生産ではない様なので、タイムリーな追加生産ができないのかもしれません。

そしてもう一つは、商品の動き方の違いもあるでしょう。


まず、従来の作業着向けラインアップはシーズンごとの商品の入れ替えは少ないのではないかと思います。
一方、新しいラインアップの、アウトドアウェア、カジュアルウェアはラインアップの変更が必要になるはずです。
そのため、前者は比較的在庫期間が長くなっても商品の価値の面で問題はなさそうですが、後者は売れ残り在庫の価値の低下が大きくなりそうです。

「一般論では」ですが、多くのアパレルでは、機会損失を無くすことが優先されるために過剰在庫が発生しやすく、それらが死蔵在庫になるのを防ぐための安価販売が常態化してしまっています。


結果的に、商品企画・生産時からセール販売が前提に考えられているため、値引き販売を前提としたコスト計算が行われることで、本当の定価がいくらであるかわからなくなっていると言われています。

アパレル業の診断の仕事をしていても、この様なケースが非常に多いので、私には、ワークマンの営業時間だけでなく在庫管理の面でも、筋が通っていて、個性的で大変面白いなと感じました。

ユニクロとの比較からみえてくること

ということで、ザクッとですがワークマンとの業界の盟主と言える、ユニクロのIR資料を調べてみました。

余談ですが、私の中では、商品面のエクセレンスのみならず、オペレーション面のエクセレンスを合わせ持つ会社が本当に強いと思っています。
前者が、洋服そのもので、ユニクロの場合は「機能性」では、他の追随を許しませんよね。
後者は、会社の仕組みのところで、定員の教育やマーケティング等ですが、ユニクロの場合は生産から販売までも相当ノウハウが詰まっているのではないかと思います。

(単位:百万円)
  ワークマン
2019年3月期
ユニクロ
2019年8月
営業総収入 66,969 2,290,548
営業利益 13,526 257,636
経常利益 14,755 252,447
棚卸資産 7,198 410,526
在庫回転率(ヶ月) 12 5
期末店舗数 837 3,589
純資産 66,927 983,534
純資産経常利益率 22% 26%
総資産額 83,183 2,010,558
両社のHPのIR資料より

あれというか、やはりというは、思いのほかワークマンの在庫が多いなと感じました。ユニクロが売上5ヶ月分の在庫に対して、ワークマンは12ヶ月分になります。
ただこれは、ユニクロが優秀すぎるのかもしれないし、ワークマンの品揃えやターゲットの違いによるものとも言えます。

今回買い物をした、ワークマン小田原国府津店は品揃えが豊富でした。例えば雨合羽でも用途の応じてか、何種類もありましたし。履物でも何十種類と豊富です。
やはり専門店としての顧客提供価値で考えると、たとえ在庫回転率が悪くても、プロの要望に応えられるモノを置かなければいけないのかもしれません。

そう考えると、ユニクロに品揃えは、相当シンプルですよね。
同じアパレル業界でも、「ドメインやターゲットの設定の違いによって、企業の戦略(この場合は品揃えや在庫管理)も変わってくる」という点が垣間見れて面白い事例でした。

ワークマンは2020年3月期も好調で決算予想を上方修正しているようです。
ターゲット層の拡大が成長に寄与するなかで、新規顧客層と従来顧客層の棲み分けや共存をどの様な戦略(例えば営業時間や店舗の品揃え、在庫管理)で進めていくのか、この先の続きが楽しみですね。

無骨な「笑わない男」が、世間の注目をあびるようになり、これまでの生き様(生き残り術)を貫くのか、あるいは変わっていくのか、

といった感じでしょうか。私の勝手なイメージですが。